曹洞宗大雄山最乗寺の座禅修行!宿坊の精進料理で泣いた涙の理由

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座禅を組みに行ったら、思わぬ形で食の大切を思い知らされた。

夏になると思い出すことがある。

年に一度、曹洞宗大雄山最乗寺で、2泊3日で夏季禅学会という名の宿泊座禅会が行われる。記憶が不確かだが、だいたい4年に一度参加し、合計5回参加している。

「趣味はなんですか?」と聞かれたら、「修行です」と答える。

それぐらい、座禅や修行が趣味の変わった人間だ。年に一度の貴重な座禅会と聞くと、行かない訳にはいかない。

僕が2度めの夏期禅学会に参加した時のことだったと思う。お坊さんのが涙を流すのを見たのは。

大雄山最乗寺の夏季禅学会で、座禅以上に食の大切さを教えられた話

年に一度という理由もあるのか、最乗寺の宿泊坐禅会は人気がる。毎年100人近い人が参加している。(最近は少なくなってしまった)

参加している人は、年齢層が高い人が多い。だいたい、4年に一度ぐらいのペースで参加しているが、年下の人に会ったことはほとんどない。

宿泊の坐禅会なので、一日三食の食事もある。曹洞宗の考えでは、食事の最中も座禅と考えるため作法が厳しい。座禅中と一緒なので食事中の会話もできない。作法に気を取られてあまり食べた気がしない。食事の内容は、肉料理が出るはずもない精進料理。基本一汁一菜だ。

僕は数々の寺で、宿泊坐禅会、日帰り坐禅会を経験したが、この最乗寺には他にはない魅力がある。座禅を行う本堂の横に滝が流れていて、座禅中にこの滝からながれる「ザーッ」という、滝の音を耳にしながら座禅を組むことになる。滝の音に意識を持っていくと、いつも以上に座禅に入り込める。

カフェに行くと、集中して勉強している人をよく見る。なぜ「ザワザワ」騒がしい場所で、勉強できるのだろうかと思うことがある。カフェで勉強している人たちと、感覚は似ているかもしれない。

僕には滝の音が、集中力を増進させる効果がある。もちろん、座禅参加者に聞くと「滝の音がうるさいな」という人があるので、好みもあるのだろう。

座禅修行の最終日、みんな一緒に大広間で食事をとる。最終日は食事中の会話も可能だ。みんな思い思い、座禅の辛さや、修行の感想を語りあう。

最終日の食事は、近隣のボランティアさんを集め、豪勢な食事を振舞ってくれる。修行期間中、一汁一菜だったので、あまりの豪華さに毎回感動する。

どういうわけか、蓋つきの日本酒までる。謎の大盤振る舞い。俗に言う般若湯と言えばいいのだろうか。山の奥にあるお寺のため、「車やバイクで来る人は、お酒は飲まずに持ち帰りください」と案内されますのでご安心を。

豪勢な食事だからといって、精進料理を離れることはない。そのため、肉はもちろん入っていない。それでも豪勢だ。

最乗寺は曹洞宗の修行寺でもあるので、長く修行している修行僧がたくさんいる。若い人から、外国人の人まで様々。

最終日の食事は、お坊さんも一緒に食事をする。その中の一人の長く修行している若いお坊さんが、思わぬ予想外の行動をとった。

お坊さん突然の涙。あなたの涙は修行よりご利益がある

お坊さんの一人が一切食事を取らない。下を向いて微動だにしない。食事のはじまりから終わりまで、まったく動いていないのだ。

まわりの人たちは食事を終えて、僕も食事を終えていた。

お寺の偉い方のお別れの挨拶があり、食事の片付けが始まり、みんな帰り出す。そのお坊さんは食事を見つめたままだった。

すると、体験修行に参加した参加者の一人が声をかけました「どうかしましたか?」と。

お坊さんは一言「わたしにはもったいなすぎて食べれません」と泣き出してしまいました。

この日に限ってはお坊さんも、体験修行の人達と同じ食事が取れる。豪勢な食事をみんな一緒に食べた。この若い修行僧は、普段はどれだけ質素な食事をとっていたのだろうか。

普段修行僧がどんな食事をしているかわからない。でも想像はできる。眼の前の豪勢な食事を見て、涙をながしてしまうぐらいだから。

長期の修行僧は、年単位で寺にいる。もしかしたら、この年に1度の夏期禅学会以外は、まともな食事にありつけていなかったのだろうか。そして、1年ぶりの豪勢な食事を目の前にして。感極まって泣いてしまったんだろうか。

僕は一つの考えを想像した。

「もったいなすぎて食べれません」と修行僧は言った。もしかしたら、普段の質素な食事で満足しているから、必要のない豪勢な食事を食べることに涙をしたのかもしれない。

必要な食事は取っている。

まだ恵まれない人がいるのに、自分が食事をすることで、救われる可能性がある人に食事が行きわたらなくなることが、もったいないと。食材が役に立つ可能性があるのに、満足してる自分が食事をとることで無駄になると。

水だけで1週間過ごす断食に参加したことがある。断食をすることで、食事の大切さを人より知っているつもりだった。断食中は食について考えていたが、断食が終われば食べたいものを好きなだけ食べていた。僕はなんて贅沢な人間だろう。

水だけで1週間断食するより、宿泊して集中して座禅するより、修行僧の涙一粒が、一番の修行になった最乗寺の夏期禅学会だった。

食の大切さについて、よく考えさせられる出来事になった。

その後、お坊さんが食事をどうしたかわからない。お酒を飲んだかもわからない。遠慮なく食事をしてパワーを付け、その感受性の良さという才能を使い、世の中に役立ててほしいと思った。

終わりに

最乗寺の夏期禅学会は、年に一度しかない貴重な座禅会。世界一巨大な下駄があり、天狗伝説もあり、パワースポットでも有名で、ご利益もたくさん。一度いってほしい魅力的な座禅スポット。

だいたい、八月の後半ぐらいに夏期禅学会を行う。申し込みは一ヶ月前ぐらいから始まる。滝の音色を聴きながら座禅を組んで、精進料理を食べると、思わぬ形で食の大切を知れるかもしれない。

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