肝試しに混じる本物の幽霊に襲われた怖い話

スピリチュアル

思い出すと今でも右の足首がズキズキ痛み出す。幽霊に襲われたのは子供の頃、幼稚園の時の話だ。

通っていた幼稚園では、年に1度お泊まり会のイベントがある。みんなで、別の幼稚園に泊まりに行くのだ。親のいないちょっとした小旅行。楽しくないはずがない。

実際、お泊まり会は楽しかった。正確には途中までは。すべての楽しい思い出は、お泊まり会のメインイベント。肝試しで起きた恐怖体験で消え去ってしまった。

幽霊や怖い話が大っ嫌いだった。心霊番組を見ると寝ることができず、夜な夜なうなされる。そんな僕にとっては、肝試しなんて参加したいわけがなく、肝試しの直前まで一人泣き続けていた。肝試しの順番は最後。もしかしたら、泣いている僕を気遣ってくれ、順番を後回しにしてくれたのかもしれない。

肝試しのルールは単純。二人組のペアで部屋のドアを開け、対角線上にある部屋の出口から出る。それだけ。よくある、折返し地点にある小道具を持ち帰るなど、特別なルールはなかった。

ルールを聞いた僕はペアになった友人に、「怖いのやだから、一気に走り抜けよう」と言った。友人も幽霊が大っ嫌いで「いいよ」と同意してくれた。

肝試しの順番を待つ間は恐怖だった。先を行く人の悲鳴を聞き続けることになる。一人で泣いていたが、ペアの友人も泣き始め、二人で泣き続けていたら、順番がまわって来た。

嫌々ながらもドアを開ける。暗い部屋の中には怖そうなオブジェがたくさん並んでいた。定番の理科室のガイコツ、部屋の端には白装束に三角巾をつけた男性の先生が、自分の顔にライトを向けて、スイッチのオンオフを繰り返していた。大人から見たら笑ってしまうような演出だが、子供にとっては恐怖そのものだった。

最初の約束どうり、二人で手をつなぎ、一気に教室を駆け抜けた。たいした距離はないはずだが、100メートルにも、200メートルにも感じられた。

教室の真ん中、少し端にオルガンがあった。僕はオルガンがある側を走っていた。オルガンの横を走り抜けようとした時、大きく転んでしまった。何かが走るのをはばんだのだ。

うつ伏せの状態になり、足首になにかの違和感があり見ると、人間の手が思いっきり足首を掴んでいる。しかも、まったく離そうとしない。

ペアの友人は転んだ僕を見て「ギェッー」と言いながら、一人置いて走り抜け、先にドアを開けてゴールしてしまった。

一人になった僕は、足をバタバタさせて必死にもがいた。もがいても相手は力を緩めない。もがいている時、その手の先にあるものを見た。手はオルガンの下、10センチぐらいの隙間がありそこから出ていた。

その先にあったのは、薄暗い暗闇の中に浮かぶ二つの目玉だった。部屋が薄暗いせいなのか、目だけが浮かんでいるように見えた。その時、足首から手が離れ、必死で起き上がり走った。

ドアを開け転がり込むようにゴール。ペアの友人に、「なんで一人で先に行くんだよ!」と攻め立てた。友人は、「ごめん。怖かった」と言ってくれたのを覚えている。

ゴールできて安心したら、突然体に痛みが走った。転んだ時に頭をうち、手足もすり傷だらけ。恐怖で痛みを忘れていたらしい。

怪我をした僕に先生が気づいた「どうしたの?」と声をかけてくれた。肝試しであったことの詳細を話した。

「オルガンの下から手が出て来て、掴まれて転んだ」話しはじめたらどんどん恐怖が戻って来て、また泣き出してしまった。

先生は不思議そうな顔をして「確かめてくる」と言い、一人部屋に入った。戻ってくると「明かりつけるから一緒に入ろう」と、肝試しのあった部屋に僕の手を引いて入った。

中に入ると、様々なコスチュームを来た先生が集まって来た。どうも走り抜けたせいで気づかなかったが、何人か先生がいたらしい。

先生は、「誰がやったかわかる?」と聞いた。

僕は「わからない」と正直に答えた。

先生の説明だと、何人かの先生が脅かす為に隠れていたが、オルガンの下にいた人はいない。子供が怪我するような脅かし方は絶対にしないはずと説明してくれた。先生達は、子供の思い込みだと思っているようにみえた。

でも、そんなはずない。誰かの手は間違いなく僕の足首をしっかり掴んでいた。大人になった今でもあの感覚は覚えている。オルガンの先にあった暗闇に浮かぶ目も覚えている。

よくよく考えると不思議なことは、オルガンの下の隙間は10センチもないぐらいだ。にもかかわらず、人間の目が水平に並んであったこと。

最初はうつ伏せになった人が、オルガンの下から手を伸ばし、僕を掴んだものと思っていた。

10センチの隙間にうつ伏せになって正面を見たら、アゴが邪魔をして目は見えないはずだ。となると、本当に暗闇の中に目玉だけ浮いていて、暗闇から手だけが出て来ていたのか。

もしかしたら、オルガンの下の先には、何か得体のしれない別の世界に繋がっていたのかもしれない。

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